個展「-境界線を薄くする-」(⼤阪・コンテンポラリーアートギャラリーZone)

「海」パネルに綿布・アクリル絵の具、143cm(横)107cm(縦)の楕円

百合野 美沙子 個展「境界線を薄くする」

会期:2020年9月20日(日)~10月4日(日)
休廊日:木・金
時間:12:00~18:00(最終日は16:00まで)
会場:コンテンポラリーアートギャラリー Zone
〒563-0043 大阪府箕面市桜井2-10-5(阪急桜井市場内)
TEL:080-3106-3177 http://www.art-gallery-zone.com

他者を想像することの必要性を、日々強く感じています。
人と人とは本当によく違っている。自分とは異なる人を認め、理解し、共に生きることは、想像以上に難しくなっているのではないでしょうか。
学校で生徒と関わる中でも、社会の中でも、そのことを強く実感します。

市立中学校に勤務し、生徒と造形の授業を行う中で感じるのは、「共に生きる」という言葉の現実的な重さです。
クラスの中には、発達や知覚の特性、家庭環境、心身の不調など、さまざまな事情を抱えた生徒たちがいます。
「気の合う人とだけ付き合う」という単純な関係では成り立たない、多様な小さな社会です。
だからこそ、他者の見ている世界を想像しようとする意識が欠かせません。

思い返すと、私が中学生の頃、世の中は「きっと良くなっていく」と信じていました。
国と国とが理解し合い、環境や平和の問題に協力して取り組む未来を夢見ていたのです。
けれど、18年が経った今も、貧困・紛争・差別・環境問題など、世界は多くの課題を抱えています。
「自国第一主義」や「国境の壁」といった言葉が象徴するように、視線は“外へ”ではなく“内へ”、
「自分たちだけが良ければいい」という意識へと収束しているようにも感じます。

そして、この数年で私たちはもう一つの「境界」に直面しました。
それは、コロナ禍による距離です。
人との間に物理的な間隔を取り、触れ合いや会話、集いのかたちが制限される中で、
「近づかないことが思いやり」であるという新しい常識が生まれました。
人との距離を保つことが安全の象徴となる一方で、
心の距離までもが少しずつ広がっていくような不安を感じた人も少なくないでしょう。
私自身もその矛盾の中で、「つながるとは何か」「境界とは何か」を改めて考えるようになりました。

今回の展示タイトル「境界線を薄くする」には、
そうした社会や日常の中に生まれる“見えない線”への問いを込めています。
国と国、人と人、障がいのある人とない人、学校の中と外――
あらゆる境界は、思考の中に存在します。
けれど、人は同じものを見ていても、まったく違う世界を見ています。
「こう見えるのが正しい」「こう見えないのはおかしい」――
そんな線を、自分にも他者にも引かないでいたいのです。

作品の主軸はこれまでと同様に、無意識の世界や湧き上がる光景を描いたシュルレアリスム的表現ですが、
今回はそこに「常識のゆらぎ」や「境界を越えるまなざし」を重ねました。
他者を想像すること、線の向こうを思い描くこと。
その想像力こそが、これからの時代に最も必要な感性ではないかと感じています。

展示作品


「海」パネルに綿布・アクリル絵の具、143cm(横)107cm(縦)の楕円

「草」パネルに綿布・アクリル絵の具、143cm(横)107cm(縦)の楕円

「お風呂の笑い声」パネルに綿布・アクリル絵の具、1800mm(横)140cm(縦)