そこにあったかもしれない 影 

木炭 車輪 (写真L版) 

本作は、地面上に実在しない物体の「影」を描き、あたかも現実の光によって生じたかのように提示するものである。

一般に影は、物体の存在を裏づける付随的な現象として認識される。しかし本作では、その因果関係を意図的にずらしている。存在の証としての影が、むしろ「そこには実際に存在しないもの」を指し示す点において、知覚の構造を問い直している。場合によっては、存在はするがそのようには投影されない影を描き、だまし絵的に遊んだりもした。

地面に描かれた影を「現実」として受け取り、その直後に対応する物体の違和感に気づく。この時間的ずれによって、現実と虚構の境界に一瞬の揺らぎを生じさせることができたら、「見る」とは、実在の確認だけではなく、欠落を補完する想像の行為にもなるのではないかと考え制作した。

地面という日常的な現実空間において、幻想が発生する契機を提示することで、本作は「見ること」と「想像すること」の関係を再考させたい。

木炭やチョークで地面に描写し写真撮影