
百合野 美沙子 個展「葛藤と分岐点」
2022年8月27日(土)~9月11日(日)、木・金は休廊、12:00~18:00(最終日は~16:00)
コンテンポラリー アート ギャラリー Zone
大阪府箕面市桜井2-10-5< 阪急桜井市場内>〒563-0043
080-3106-3177
マンションから飛び降りようとしている女子生徒、自分の中に別の人格が複数存在していると語る生徒、トイレの個室に閉じこもる生徒。今回展示している絵はすべて、実際に学校で私が出会った生徒たちを出発点にしています。
個人情報への配慮から、姿や光景、構図は特定につながらないよう変えています。しかし、絵を描き始める契機となったのは、まぎれもなく彼女たち、彼らとの出会いでした。生徒たちの言葉や起こした出来事をもとに、私なりにひとつの場面を想像し、絵へと置き換えています。
誰もがそれぞれの背景を抱えて生きていますが、彼女たち、彼らは、ときにこちらが経験したことも想像したこともない事情を抱えながら日々を生きています。中学校教諭として働いていたころ、私はそうした生徒たちのすぐそばで多くの話を聞き、多くの姿を見てきました。
教員であれば誰しも向き合うことではありますが、とりわけ義務教育の現場では、学校という場が、学習指導だけではなく、家庭の課題や生活の実情、保護者との関係、福祉的な支援とも深く結びついています。そこには、金銭的な問題や家庭内の不和だけでは言い尽くせない、受け継がれてきた習慣や関係性、地域性、障がい、友人関係など、複雑に絡み合った事情があります。当たり前に生きること、理想的な関係を保つことが、どれほど繊細な均衡の上に成り立っているのかを、私はその現場で何度も見てきました。
そうした葛藤や行動を理解したいという思いがある一方で、どれだけ想像しても、私はそのすべてを理解することはできません。だからこそ、絵という形式に向かっています。絵は、ひとつの意味に断定できないもの、言葉では捉えきれない揺らぎや矛盾を、そのまま置いておくことができるからです。
壮絶な事件の報道が絶えない現在、ニュースの中で語られる世界は、どこか遠い場所の出来事のようでいて、実は私たちのすぐそばとつながっているのではないかと感じています。
今回描いた彼女たちの分岐点は、いつだったのだろうか。その先に、何があったのだろうか。
人はきっと、ときに誰かの分岐点に立ち会い、誰かの葛藤に寄り添うことができる。そのことを、私は作品を通して考え続けています。
【展示作品】

パネルに綿布 アクリル

パネルに綿布 アクリル

パネルに綿布 アクリル
